アートプログラムとまちの風景(後編)|Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]

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アートとデザインのある港まちの社交場「NUCO」

「MAT, Nagoya」の空き家再生プロジェクト「WAKE UP! Project」をきっかけに、約20年空き家だった元寿司店「潮寿し(うしおすし)」を改修して生まれた、まちの社交場「UCO」。2018年にその一帯の長屋群が解体されることとなり、向かいにあった空き家を再生した新たな拠点「NUCO(ニューシーオー)」がオープンしました。

UCOの活動やコミュニティ、部材の一部を引き継ぎながら、かつて編み物教室として使われていたNUCOの建物の歴史が呼応するような改修を手がけたのは、アーティストユニット「L PACK」と建築家の米澤隆さん、大工さんや建築を学ぶ学生たち。

 現在は「何かやりたい!」という人をサポートする場所にもなっており、飲食物が提供できるカウンターキッチンや、展示・ワークショップができる2階スペースの貸し出しなどを行っています。場所を活用しているのは、港まちに暮らす大人や学生たちが中心。日々の運営や発信を手がけるのは、学生から社会人までの10人のUCOメンバーたちです。

ACKT事務局メンバーが最初に目にしたのは、1階でずらりと展示販売されたニット類。これらは全て、港まちの編み物の名手・トヨタさんが手編みをした一点物で、網目も美しく、港まちの人から譲り受けたという毛糸の色合わせも凝っています。この冬はセーターが売れ筋商品だったそう。港まちでMATが活動するようになってから、トヨタさんのニットは今や全国、そして世界へ旅立っているというので驚きました。

古民家の趣を残す2階スペースでは、愛知県立芸術大学に通う学生の作品展や、学生の陶芸作品と近所の花屋さんがコラボした活け花展示会などが行われています。毎週第2・第4金曜日には、10代や引きこもりの子たちが集います。1階から2階の一部が吹き抜けになっており、2階からは1階で大人たちがお酒を飲んでいる雰囲気が見えるなど、多世代が自然と混ざり合う場にもなっています。

UCOのロゴマークはデザイナーのフクナガコウジさんが手がけており、毎年新しくリニューアルされるそうです。メンバーから「UFOに似ているね」とも言われるUCOは、前身の旧寿司店「潮寿し」をリスペクトしているほか、“「Unidentified “C” Organism」=「未確認な “C” の有機的組織体」と定義し、CoffeeやCafe、Chair、Communicationなど、さまざまな「Cを頭文字とする言葉」にまつわる出来事をつむいでいく。”という意味もあります。

Cからはじまる単語は、アルファベットの中で最も多いそうです。2階の一角には、メンバーの日報から抜き出した「今日のCからはじまる単語」が展示されるなど、話題が尽きないほどの広がりを感じられます。傍らのミュージックプレイヤーからは、名古屋在住のミュージシャン、テライショウタさんによる「UCOの歌」が流れ、「UCOメンバーが好きな寿司ネタ」などが盛り込まれた歌詞には思わずクスリとしてしまいます。

 デザインやアートの素地があるまちの社交場では、思いもよらない自然発生的なつながりや、「トヨタさんのニット」や「UCOの歌」に見られるような、自由な解釈や新たな作品が生まれていくのかもしれません。

NCOのように、港まちには「WAKE UP! Project」から生まれたアートの拠点が点在し、空き店舗のシャッターを閉めているだけでは見られない新しい風景や価値を生み出しています。

 街角のショーウィンドウのような「スーパーギャラリー」は、閉業したスーパーマーケット「築地公設市場」の一角を改修して生まれた小さなギャラリー。中に入ることはできませんが、ウィンドーギャラリーとして通りすがりに眺めることができます。

閉業した店が空き家となり、周辺の人通りも徐々に少なくなって、まちが活気をなくしていく。そんな光景は港まちに限らず増えています。港まちの事例からは、新しいものに作り変える前に、そこにあるものを活用することで、新しい動きが生まれていく様子を窺い知ることができます。

 

Interviewee : Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya] https://www.mat-nagoya.jp/
Interviewer : ACKT
text : Yu Kato photo : Yuki Akaba