CAST|Vol.01 加藤健介

ACKTでは、まちなかで新しい動きを作る人やそこに参加する人を【CAST】と呼びます。そんなCASTのさまざまな活動をピックアップしご紹介します。Vol.01ではACKTのメンバーでもある加藤健介さんが普段どのような活動を行っているのか、まちづくりの仕事や国立本店のことを中心にお話を伺いました。
加藤さんは、国立市を拠点とし、地域に密着したまちづくりを行う「合同会社三画舎」の運営や、本とまちをテーマにした「ほんとまち編集室」の室長として国立本店の運営を行っています。これまでの活動やまちづくりに対する思いなどを教えていただきました。

Q.主な活動内容を教えてください。
三画舎では、まちづくりに関わる計画づくりやワークショップの企画運営、10分圏内の暮らしを大切にする求人メディア「国立人」の運営、国立市発行の「国立新書」の企画・編集・デザインなど、まちに関わる様々な業務を行っています。富士見通りでは”シェアするコンビニ”をテーマに、仲間と共に新たなプロジェクトを進めています。

Q.国立で活動を始めたきっかけはありますか?
きっかけは国立本店です。9年前、知人に誘われてイベントに参加したことをきっかけに知り、仕事以外に自分が活動を行うコミュニティとしてちょうどいいと思い、メンバーになりました。当時は世田谷区に住んでいたのですが、様々なイベントやプロジェクトに関わる中で、国立のまちや人に対して居心地の良さを感じるようになり、5年前に国立に引っ越してきました。
その頃から自分の住んでいるまちということもあり、国立での仕事が増えていったように思います。

Q.国立本店はどんな場所なんですか?
元々は中央線デザイン倶楽部(現在は中央線デザインネットワーク)という中央線沿いで活動をしている建築家やデザイナーの人たちが自分たちの活動拠点として作ったのが始まりでした。当初は今と違い、2年ごとに店長が変わるシステムで運営されていました。7年目に入るタイミングで、「ほんとまち編集室」という本とまちをテーマに活動する、30人くらいのメンバーが運営する場としてシステムが一新されました。メンバーが1年ごとに徐々に入れ替わっていく仕組みになっていて、2022年9月から11期目に入ります。僕自身は2期目から参加して、その後代表を引き継ぐことになりました。メンバーになると、自分の好きな本や紹介したい本を置いておける“ほんの団地”という棚を持つことができ、それぞれがいろいろな本を持ち寄るので、国立本店は多種多様な本が集まる小さな図書館のようになっています。最近はこのようなスペースを見かけることも多くなりましたが、はじまった当時はまだ珍しく、わりと先駆け的な場所だったのではないかと思います。


Q.国立本店ではどんな活動をしているんですか?
国立本店自体は、週5日13:00-18:00の間はスペースを開放していて誰でも好きなように過ごすことのできる空間になっています。ほんとまち編集室のメンバーは、月に1度、日替わりで国立本店の店番をするのですが、それ以外の活動は基本的に自由としていますし、ゆるやかさを大切にしています。積極的にイベントを行ってもいいし、店番をしているだけでもいい。国立本店がメンバー個々の活動の入口になればいいと思っています。例えば、読書会を開く、自宅で焙煎したコーヒーを振る舞う、気になる人をゲストに呼んでトークイベントをする、地域と連携した活動をするなどなど。本とまちというコンセプトはメンバーで共有しながら、あえて明確な目的は設定せず、メンバーそれぞれがやりたいことを実現することに重きを置いています。

Q.国立本店のメンバーにはどんな人がいるんでしょうか?
1年ごとにメンバーが徐々に入れ替わる体制を取っているので、年によって毎回違ったメンバーが活動をしています。このシステムになってから10年になりますが、長く活動を続けていると「実は4年前から知っていたけど、入るなら今だと思って来ました」「前から気になっていたけど、仕事をやめて時間があるから入ってみようと思いました」といった人が結構多くて。人によってやってみたいと思うタイミングはそれぞれ違うんだなと…。国立本店みたいなコミュニティやプロジェクトは、例えば3年など短期間で区切られて終わってしまうことが多いイメージがありますが、あえて長く活動を続けることで、入りたいタイミングで入ることができる、その時々のメンバーによって印象が全く違う、そんなふうに循環していくのが面白いのかなと最近では思っています。僕自身もこの場所をなるべく長く維持し続けながら、その時々で関わってくれる人と活動をしていけるといいなと思っています。

Q.室長として心がけていることはありますか?
先にも言った通りゆるやかな運営方針なので、僕は代表ではありますが、メンバーとはできるだけフラットな関係でいられるように心がけています。ですが、何かをしたいと思う人がいたときにはその動きをサポートできるように動いたり、全体の活動が停滞してしまう時期などは自分が積極的に動いたり、常に0.2歩くらい、ほんの少しみんなの前にいるようにしています。国立本店の全体のトーンが常に変わらないようにしたいと思っています。

Q.加藤さんから見て、国立はどんなまちですか?
国立市は文教地区に指定されていますが、最近は段々と文化的なものが失われてきているのではないかと思っています。国立駅側は特に、昔からあるお店がなくなったところにコンビニやチェーンの飲食店などが入り、普通のまちになってきている印象があります。もちろん昔ながらのお店や雰囲気がずっと残っていけば良いわけではなく、自分や周りの若い世代の人たちがこのまちのこれからを考え共有していくことは大切ではないかと感じています。新しい文教地区のあり方、新しい国立市のあり方を考えていかなければいけないということです。その中で、ACKTの活動もそうですし、自身が運営している合同会社三画舎や、情報発信などをお手伝いしている国立市のクラフトビール“くにぶる”、富士見台団地にある建築家・能作淳平さんが運営されているシェア商店“富士見台トンネル“、一橋大学を卒業してスナックを継承した坂根千里さんの“スナック水中“、新たに取り組むシェアするコンビニ”みんなのコンビニ”など、国立の若い世代でさまざまな活動を行っている人が増えてきていて、そういった一つひとつの活動が全体のまちづくりに繋がっていくのではないかと。このような活動がもっと増えていくと、今までとは違った国立のカルチャーが見えてくるのではないかと思っています。

Q.もともとまちづくりに興味があったのですか?
昔は自分の住んでるまちに全く興味がなかったんです。大学も、何かものづくりに携わりたいと思い、建築学科に入りました。ですが、下北沢の再開発を端に開催された、国際学生ワークショップに大学4年次に参加したことや、所属していた研究室での沖縄合宿、岡山県高梁市での研究などをきっかけに、建物からまちへと興味の幅が少しずつ広がっていくことになりました。

Q.仕事以外で取り組んでいることはありますか?
最近はあまり仕事とプライベートの境界がなくなってきていますね。そもそもあんまり分けたいとも考えていなくて、プライベートで行った場所でも仕事に結びつくことがあるかもしれないし、仕事で出会った人とも友達として関係がずっと続くこともあるし…。
少し話は変わりますが、お金は稼ぐことは意識していきたいと思っています。というのも、まちづくりというとボランタリーなイメージを持たれることが多いように思うんです。でも実際にそういう活動ができるのは、ある程度お金などに余裕のあった前の世代の人たちの考えのような気がしていて…。同じような考えで僕も仕事を続けてしまうと、さらに下の世代の人たちもそれを踏襲しなければいけなくなる。それってどんどんみんながジリ貧になっていってしまうことになるのではないかと。そうならないように、お金もちゃんと稼げて、まちづくりにも貢献できる、そんな仕組みづくりをしていく必要があると思っています。その辺りを意識しながらも、どんなことでも楽しんで取り組んでいきたいですね。

Q.最後に今後の活動について教えてください。
これからの20〜30代が、この地域をベッドタウンとしてだけではなく、活躍できるまちとして当たり前に選んでくれるようにしていきたいです。難しいけど、都心でも地方でもなく、この地域を選ぶ人を増やしたい。その為に、自分自身も外の空気に触れ、知見を増やし、新しいチャレンジをしていくことが大切だと考えています。先の”シェアするコンビニ”や、真鶴駅前に借りた旧病院物件の活用もその一部です。ACKTの活動も。5年後、10年後に想像もつかないような変化が生まれていると嬉しいです。

 

加藤健介|(一般社団法人ACKT理事)2018年9月に「合同会社三画舎」を設立。東京都国立市を拠点に、これまで地域で営まれてきた歴史・文化と、これから先の人の想いを大切にするまちづくりを実践中。求人サイト「国立人」の運営、国立市発行「国立新書」の編集・デザイン、連続講座「こくぶんじカレッジ」の企画運営など、まちに目を向けるきっかけづくりに力を入れている。能作淳平氏、佐竹雄太氏とまちのチャレンジを応援する「みんなのコンビニ」を富士見通りで計画中。国立本店「ほんとまち編集室」室長。

Interviewee :Kensuke Kato
Interviewer : ACKT
text : Ryo Ando
photo : Ryo Ando,Yu Kato