遊◯地|URBANING_U ONLINE レポート1

ACKTの活動地である東京都国立市では、空き家や空き店舗、活用されていない畑、住宅街の一角にある公園、あまり使われていない公共空間などが点在しています。「遊◯地」は、そのようなまちの中で当たり前になった風景、使われていない場所などをまちの余白(◯)と見立て、本来とは全く異なるアプローチで使うことで、これまでになかった新しい光景や交流を生み出すきっかけをつくる取り組みです。

この「遊◯地」のパイロット企画として、2022年3月19日(土)、20日(日)の2日間開催した「URBANING_U ONLINE」について、全3回にわたりレポートします。

「遊◯地」の取り組みを実施するにあたり、最初に選んだ場所が、JR中央線の国立駅から立川駅の高架下空間。JR関連会社の事務所、自転車置き場や体操教室、プログラミング教室、コンビニエンスストアなどが点在しているものの、まだ具体的な活用方針を持たない、動きのない空間が多く残っています。通学や通勤などで使う人、散歩をしている人、自転車でせかせか走り抜ける人……往来がある一方で、行動の余白のない連なりとなっていることが分かります。高架下空間に何らかの可能性を見出せたら、人の動きに変化が生まれるのではないかと想像できました。

わたしとまちとの関係性を見つめ直す

この場所で最初の「遊◯地」をはじめるにあたり、声掛けをしたアーティストが、宮口明子、笠置秀紀によるユニット、mi-ri meter(ミリメーター)。日常を丹念に観察し、空間と社会の様々な規範を解きほぐしながら、一人ひとりが都市に関われる「視点」や「空間」を提示する活動を各地で行っています。

mi-ri meterと共にこの界隈のリサーチを行い、議論した結果、今回に適したプログラムとして提示されたのが「URBANING_U 都市の学校」でした。「制度や慣習によって絡みあった社会的枠組みを解きほぐし、自らの空間を取り戻す。わたしと都市の距離を縮める試み。」として、過去に数度、東京や大阪の都市で実施されたもの。mi-ri meterからの指示に沿って、まちを巡り、mi-ri meterと対話をしていく中で、参加者自身がまちとの関係性を見つめ直すプログラムです。これは私たちが国立のまちの異なる側面に気づくきっかけにもなると期待されました。

オンラインで全国とつながるURBANING_U 

私たちが実施したプログラムは「URBANING_U ONLINE」。通常の「URBANING_U」は、参加者が現地に集合し、そこを起点にまちを巡ることになりますが、コロナ禍という現状を加味し、今だからこそできることを積極的に試みるため、あえてオンラインを通じて全国で同時参加できるプログラムに変更したものです。

国立市での参加+全国参加として2週間程度の公募をかけたところ、国立市だけでなく、札幌や京都、神戸、大分など、全国各地から8名の参加が決定。参加者には事前にmi-ri meterからインビテーションとして、”WORK”の指示書やワークカード、リアルタイムで一人称視点の映像をオンラインに繋ぐためのスマートフォンを同梱した「URBANING U_KIT」を送付しました(オンライン接続には会議アプリ「Zoomミーティング」を使用)。

「URBANING_U ONLINE」は2日間のプログラムで構成。DAY1は「エクササイズプログラム」として、参加者がZoomミーティングを介したmi-ri meterからの指示にしたがってまちを巡り(WORKし)、そこで感じたことを報告・意見交換。DAY2は、DAY1の”WORK”を参加者と共に振り返る「レビュートーク」と、mi-ri meterとACKTが「国立」「アート」などをテーマにこれからを展望する「オープンミーティング」で構成することとしました。

高架下に現れた大きなテントとスクリーン

当日、JR国立駅から7分程度に位置する場所に、何かが始まりそうな予感のする大きなテントを設置。国立市で参加する方も含め、自宅やオフィスからオンラインを通じての参加となることから、特製の大きなスクリーンを設置しました。
ここを「高架下臨時スタジオ」として、mi-ri meterとスタッフが待機。mi-ri meterからの指示に従い、各地の参加者がWORKを行う様子を常時スクリーンに映しだしていきました。

中編では、DAY1のプログラムの様子をレポートします。

artist:mi-ri meter(ミリメーター)
宮口明子、笠置秀紀によって活動開始。建築、フィールドワーク、プロジェクトなど、ミクロな視点と横断的な戦術で都市空間や公共空間に取り組む。日常を丹念に観察し、空間と社会の様々な規範を解きほぐしながら、一人ひとりが都市に関われる「視点」や「空間」を提示しいている。宮口明子、笠置秀紀によって活動開始。建築、フィールドワーク、プロジェクトなど、ミクロな視点と横断的な戦術で都市空間や公共空間に取り組む。日常を丹念に観察し、空間と社会の様々な規範を解きほぐしながら、一人ひとりが都市に関われる「視点」や「空間」を提示している。

text : Kensuke Kato
photo : Yuki Akaba, Kensuke Kato