ただの店 |つながるための、「ただの店」

JR南武線谷保駅南口すぐにある「さえき洋品●(てん)」は、ACKTの拠点として活用するために借りた空き店舗だった物件です。この物件自体を色々な使い方ができる場所にしていくために、2023年度からDIT(DO IT TOGETHER)として地域の参加者を募りながら、一緒にペンキで塗装をしたり、掃除をしたり……徐々に環境を整えていきました。

さえき洋品●(てん)の活用方法を考える

昨年度にもACKTにまつわる打ち合わせの使用、Kunitachi Art Center 2023のインフォメーションや交流会の会場としてなど、限定的な活用を行ってきました。

今年度は、谷保駅南口緑地での緑のお手入れを通じた交流拠点づくり「GREEN GREETINGS」の拠点としての使用や、Kunitachi Art Center 2024の公開制作や展示、ワークショップ会場としての使用など、ACKTが実施するプログラムに関連した使用に拡大してきています。

そんな「さえき洋品●(てん)」の幅広い活用方法を模索しているなかで生まれた新しいプログラムが「ただの店」です。

お金を介さないサービス

いわゆる「お店」は、サービスを提供する対価としてお金を受け取る、金銭の授受によって成立していますが、「ただの店」は、お金を介在させずにサービスを提供する、お店らしからぬお店。金銭の授受が発生しないことにより、この場での新たな「価値観の授受」が生まれるのではないか。そんなことを想像しながら、「ただ」の面白さを見出してくれる仲間と一緒に、はじめの一歩を踏み出せるプログラムとしてスタートさせることになりました。

『「ただ」のサービスを提供する』という掴みどころのない投げ掛けにより公募をかけたため、果たして興味を示してくれる人はいるのか?不安な気持ちもありながら応募を待ちましたが、蓋を開けてみれば20組弱の方々が事前の説明会に参加し、13組の方々が実際に応募をしてくださいました。

そして、すべての方々との面談を経て、最終的に7組の方々とご一緒することになりました。

7組の「ただの店」を一言で伝えると以下の通り。
・Re:Birth Players|レコード・CD・カセットを持ち寄って再生する場をつくる
・むすぶ店 チェルシー洋品店|洋裁の相談にのる
・むすぶ店 tomoru|ものやことの交換をする
・ただのアトリエ|技術を習わずに作ったり描いたりするのを楽しむ場所
・ただならぬみせ|国立に関わる人々の「見てみたい”うそ”の話」の実現を試みる工作ワーク
・ただの花店|小学生向けの「花育」をテーマにしたワークショップ
・まちのあそび屋さん|ボードゲーム等を通じてこれからのまちのあそび場を一緒に考える

「ただ」であることを意識しながらも、ジャンルも対象も幅の広いお店が集まりました。それぞれ9月のお試し開店を経た上で、Kunitachi Art Center 2024閉幕後の12月から、年度末まで毎月開店していく予定です。

「さえき洋品●(てん)」で「ただの店」を展開することで、これまで接点のなかった人が訪れ、まちや文化芸術に目を向けるきっかけが生まれることにも期待しながら、7組の取り組みを自走させていきます。

text, photo : Kensuke Kato