谷保天満宮「宵宮」 リサーチレポート

ACKTの活動地域である国立市には、1,000年以上の歴史を持つ日本最古の天満宮、谷保天満宮があります。そんな谷保天満宮で毎年開催される谷保天満宮例大祭の宵宮(よいのみや)にて、執り行われる神事「古式獅子舞」は国立市の無形民族文化財となっています。
ACKTでは国立市についての知見を深めるリサーチ活動の一環として宵宮へ訪問し、古式獅子舞の見学を行いました。

今回のリサーチには、ACKTメンバーの他にもメールニュースで募集した6名の参加者が同行。
見学に際して、郷土文化や芸術についての研究を行っている、くにたち郷土文化館の学芸員 安齋順子さんに制作いただいた古式獅子舞の資料に目を通してから、実際の神事を見学しました。
そんなリサーチ活動の様子をお届けします。

|町内ごとの個性が光る 獅子舞宵宮参り
宵宮参りの様子

宵宮が行われたのは2023年9月23日(土)。
午後7時、今回のリサーチ活動の参加者がACKTの活動拠点「さえき洋品●(てん)」に集合しました。
集まったメンバーにリサーチの説明を行い、さっそく全員で谷保天満宮へ向かいます。

「宵宮」が開催される谷保天満宮は「さえき洋品●」から徒歩6分ほどの距離。目と鼻の先にあります。
あいにくこの日は小雨が降っていたため神事の開催が危ぶまれましたが、ACKTが谷保天(やぼてん)に到着してしばらくすると神事の一つ「獅子舞宵宮参り」が始まりました。
宵宮参りは、提灯を持った氏子(うじこ)が高張提灯・金棒を持った人を先導にして天満宮の本殿の周りを時計回りに三周するという内容です。谷保天の周辺に住む氏子の人々が地区ごとに列を為し、境内を進んでいきます。
氏子とは、自分の住む土地を守るとされる氏神に仕え、神社の手伝いなどを行う方々のことですが、宵宮参り中には氏子によるさまざまな掛け声が発せられており、その勢いと空気感には圧倒されました。同じ氏子でも地区ごとに掛け声や行進に個性があり、鑑賞しているだけでも気持ちの盛り上がる体験でした。

|伝統を繋ぐ古式獅子舞

古式獅子舞の様子

宵宮参りが終わり、いよいよ古式獅子舞が執り行われます。
本来は屋外に作られた特製の土俵の上で繰り広げられる古式獅子舞ですが、この日は昼から降り続いた雨により土俵を使用できなかったため、建物内で行われることとなりました。
舞台に上がるのは、一方が小頭、もう一方が大頭と呼ばれる2匹の雄獅子と、1匹の雌獅子。そして天狗とばか(道化)です。ばかの人数は年により違うそうですが、今年は2人でした。
谷保天満宮の宵宮では「雌獅子隠し」という舞を基にした類型を中心に行われます。
その内容は2匹の雄獅子が1匹の雌獅子を取り合い、争うというものです。2匹が争っている最中には2人のばかが雄獅子の争いを冷やかしに現れ、それを天狗が追い返すなどの場面があり、最終的には雄獅子の争いに決着がつきます。

私は実際に古式獅子舞を目にしたのはこの日が初めてだったため、どのように行われるのか全く想像がついていませんでした。舞が始まり、舞子の後ろで囃子に混じり座る解説者が解説を始めるまで舞の中にストーリーがあることもよくわかっていませんでしたが、登場人物たちの関係性が把握できると舞の内容がより伝わってきて、舞子の一つ一つの所作にも意味を感じられとても面白かったです。

現在、谷保天で行われている古式獅子舞は1966年に発足された「谷保天満宮獅子舞保存会」の方々が執り行っているのですが、舞子になる人は初め雌獅子の役から参加し、その後小頭、大頭の役を4〜5年ほど勤めるのだそう。舞子の役目を終えたあとは新たに舞子を勤める人の指導役となり、指導する舞子が大頭役を勤め終わるまで先生を続けます。ちょっとした師弟関係のようですね。
このような伝承活動がしっかりと行われているからこそ、1,000年以上続く神事として現在も私たちが目にすることができているのだと思うと、伝え残していくことの大切さを実感します。

今回のリサーチ活動は、国立市の歴史に触れ、地域の方々の谷保天満宮やまちの歴史を継承していくことへの想いに理解を深める時間となったのではないかと思います。

text : Ryo Ando
photo : Kensuke Kato