LAND|Vol.04 HOUSEHOLD

様々なまちを訪れ、気になる活動に取り組むスペースを紹介する[LAND]。今回は漁師町として知られる富山県・市の宿泊施設「HOUSEHOLD」です。“泊まる”だけでなく、料理を通してまちの魅力を体感するハブとしてささやかな時間をゲストに提供しているオーナー・笹倉夫妻に、まちとHOUSEHOLDの在りかたについて聞きました。

Q.氷見の日常にある魅力ってどんなものでしょうか?
A.例えば、人のあたたかさ。移住して来たら近所に仲のいいおじさんがいっぱいできたんですよ。散歩してるとその辺のおじさんに「何やっとるん?」ってRPGみたいに声をかけられる。「とりあえず座れよ」みたいな感じでそのままダラダラ喋るんです。
きっと、家のドアが開いているイメージですかね。この辺は集合住宅がほとんどないので、ドアから一歩中に入るとその人の暮らしがあって、点というより面でつながっている。漁師さんの家って、言われなくても佇まいでわかるんですよね。干物が外に干してあったりして、おじさんの暮らしがはみ出ちゃってる。
もともと繁華街だから(話しかけるのに抵抗がなくて)ナンパする文化があるのかも。カウンターの横に座った近所の喫茶店のお客さんをすぐナンパして、そのまま車に乗せて一緒に観光するとか。おじさん側に「俺が声かけたら危ないって思われるかな」みたいな感覚がなくて。我々もスタッフもそういうおじさんの話を聞くのが好きなんです。
ひとり親方だろうが地元の社長だろうが個人事業主だろうが、経営者の人とかって自分で考えて自分で話してますよね。アンテナが外に向いてる感じ。RPGのようにそういう探索を楽しむ気持ちを持ってる人のほうが、このまちを楽しめると思います。

Q.HOUSEHOLDは料理をテーマにしていて、旬の食材が買えるお店や宿での料理を勧めていますよね。チェックインしたときに会話を楽しみながらまちの様々な表情を知ることができたのも印象的でした。
A.氷見は景色もきれいだけど、曇りが多いエリアでもあるのでそれは必ずしも見られるとは限らないですよね。その点、食べ物は一年を通してゆたかだし、季節の移り変わりも感じられる。近所の人にお魚もらったり野菜もらったりとかも日常茶飯事で、料理というテーマだとまちの楽しみかたが広がりやすいんです。
結局、HOUSEHOLDはこのまちとの関わりのなかで成り立ってる場所で、ぼくらだけではまったく完結してない。だからこそ、氷見という星座の見方を、「この星とこの星をつなげばこんな面白いかたちになるよ」っていうのをゲストには伝えられるように心がけているんです。つなぐ星(お店や人)も、光の強さよりも色のバリエーション(キャラクター)を意識しているかもしれません。
ぼくらも、まちとの関係性をちゃんと保ちながらやっていきたいんです。顔が見えないところでお金ばかりが生まれたとしても、投資としてはいいのかもしれないけれど自分たちはなんか面白くないんですよ。それだと事業になっちゃう。これからも、同じものを面白がれる仲間を増やしていきたいですね。

Interviewee : HOUSEHOLD
Interviewer : Keiithiro TAO
text : Ruri SATSUMA
photo : Masataka MARUYAMA